2016年12月30日金曜日

リーダー養成山行

今年はお天道様の機嫌がよろしいようで、ほとんどの山行を実施することができています。リーダー養成山行もその例に漏れず、数年ぶりの実施となりました。今年のリーダー養成山行は9/3~9/5の日程で白馬三山でした。それでは報告です。

 今回の山行は夜行バスを利用して登山口まで向かうため、9/2の夜に都庁大型バス駐車場に集合しました。この駐車場は外から見えにくい位置にあり、橋桁にある「秘密の入り口」を通らないと辿り着けないため、迷う人が数名出ました。とはいえ、皆さん時間に余裕を持って来ているので集合時間には間に合っています。
 その後、我々が乗り込んだバスは夜の街へ繰り出し、一路白馬を目指すのでした。バスの中ではリクライニングシートでぐっすりです(ぐっすりだったのは自分くらいだったようですが)。

 夜行バスの目的地、猿倉荘に到着したのは予定より2時間早い午前4時でした。外は真っ暗です。回転場からバスが去ってしまった後はしんと静まり返り、森の中に取り残されたような気分でした。仲間のヘッドライトが頼もしく思えます。



 猿倉荘には白馬三山周辺の鳥瞰図に遭難地点を示すシールが貼り付けられたものが掲示してありした。生きて帰れるか不安になりますね……。
 1日目の予定は、猿倉荘から白馬鑓温泉小屋を目指します。本来であれば大雪渓を登って鑓温泉に降りてくる予定でしたが、連日の雨の影響で大雪渓にクレバスが多数できているため通行止めとなっていたのです。歩いてみたかったのですが、残念です。
 空が少し明るくなり始めた頃、1班の出発です。自分はそのSLでした。実はSLをやるのが好きなのですよ。前に誰もいないので景色が良く見えるからです。しかし、この日は曇っていたため何も見えません。木の先に見えるのは雲です。しばらくは少しつまらなく思いながら登っていました。
 とはいえここは山です。雲くらい動きます。この日の行程の半分を歩いた頃に、雲の切れ間に白馬の山体が見えました。白いゴツゴツとした岩がそびえ立ち、それが横に長く続いているのです。なるほど確かにこれは白馬だ、と感じました。ここからはハッピーな気分で山道を歩いていましたね。










 小日向山を左手に見ながら鞍部を越え、小池のそばで小休止です。ここからも白馬の山稜が見えました。ここで見えたのは鑓ヶ岳と杓子岳ですね。どちらも美しいです。ここから登山道は少し下りになり、緩やかな道を歩いていきます。尾根をぐるりと回り込んだところで、杓子沢が見えました。杓子岳を背景に急斜面をザアザアと流れる沢、いいですね。行動食もいっそう美味しくなります。また、ここから鑓温泉小屋も見えました。ゴールも見えて、疲れが現れ始めていたメンバーも元気になったようです。



 杓子沢を過ぎたところの狭い道を慎重に抜け、白い石がゴロゴロと転がる道を歩いていきます。道が急に険しくなるところで、鑓温泉小屋がすぐ近くに見えました。ここから班のみんなで元気よく声を出しながら登り、鑓温泉小屋に到着です。



 テント場のそばを温泉が沢のように流れているので触りに行きました。ちょうど良い温度でした。山の上で大量のお湯があるなんて大変な贅沢です。そうこうしている間に後ろの班が続々と到着し、みんなでテントを張りました。
 作業を終えた後、夕食の時間まで5時間以上ありました。暇です。そこで、足湯と露天風呂を楽しむことにしました。MIHAのもう一つのHは温泉ですからね。しかしこの足湯、非常に熱いのです。足が茹でダコのようになりました。温度については露天風呂も同様です。と言っても、山の上で入るのですから、それは格別でした。景色が雲で隠れてしまったのが惜しいところですが。ちなみに、ここの温泉は露天と露出の境にあるものでした。
 さて、温泉に入ったり小屋でだべったりトランプで遊んでいる間に、夕食の時間です。今回は洋風雑炊です。シチューにご飯を混ぜたものなのですが、いくらでも食べられそうな味でした。



 夕食の後は、翌日の準備や先の登山道の偵察などをし、19時頃には寝てしまいました。

 2日目です。快眠でした。起床は3時です。この日の予定は白馬鑓温泉小屋から村営頂上宿舎までです。
 朝食を済ませてテントを片付けると、出発まで時間がありました。テント場からはちょうど東の空が見えるため、出発まで空が明るくなる様子を見ていました。朝焼けも好きですね。



4時半に出発です。ここから先はいきなり急登と鎖場が始まるので、気合を入れていきます。登山道といえども、足元は岩、左は谷です。落ちたらザックをリリースするんだよ、と言うK先輩の言葉が恐怖を助長します。そんな道を、鎖を頼りに一歩一歩進んで行きました。



 鎖場を抜けると安定した道が現れました。ありがたく思いながら登って行きます。しばらくすると正面がひらけて、朝焼けに染まった峰が見えました。ここで休憩を挟みながら、日が昇るのを眺めます。赤く染まった空が青くなる頃、僕たちは出発しました。そこからも急登が続きますが、稜線が見えているので元気に登れます。



 砂利道を歩いて最後の坂を登ると、前方に白馬鑓ヶ岳、左の方に日本海が見えました。冷たい風が吹いて、髪の間を流れる汗を乾かしていきます。始めはよいのですが、途中から寒くなりますね。そのため、休憩を短めにとって鑓ヶ岳を目指します。



 真っ白な登山道を進み、まず到着したのは白馬鑓ヶ岳です。ここまで歩くとさすがに疲れますね。歩いてきた道を振り返ると、後続の班が見えます。鳳凰山の時もそうでしたが、2班のKくんが辛そうに登っていました。



 あんな風に登ってきたんだなぁ、と思いながらそれを眺めているうちに、全員が山頂に到着しました。ここから白馬岳の方は雲がかかっていてよく見えませんでした。
 ここで一度ミーティングを開きました。翌日の天気が崩れそうとの予報が出ていたためです。雨の中で稜線を歩くのは危ないので、体力が許すのであれば今日中に、白馬岳の先の白馬大池のテント場まで行くことになりました。ここからは時間との勝負です。遅くなる前に白馬大池へ向かわなければならないのです。



 時間を気にしながらの出発でした。しかし、このあたりで雲が晴れて杓子岳と白馬岳が見えました。感動するような景色でした。こういうのが見たかったのです。道が下りから登りに変わるところで気合を入れて、杓子岳を目指しました。ここの坂は今回の山行で最も急な登りの一つだと思います。坂がゆるくなると、右側が崖で、スリル満点です。



 杓子岳の山頂では写真だけを撮って、頂上宿舎を目指します。下り坂は滑るように降りられたので楽でした。途中でF先輩が転んでいましたが、怪我はありませんでした。青空と山を楽しみながら歩き、白馬岳前の鞍部にげんなりしながら進んでいると、頂上小屋に到着しました。ここで一旦後続の班を待ちます。体力は全員まだあるので、白馬大池を目指す事にしました。この判断が、この後命拾いとなるのです。
 まずは全員で白馬山荘に向かい、そこで長めの休憩をとりました。白馬山荘はまるでホテルのような外見で、設備も整っている上にレストランのご飯が美味しいのです。ここで豪遊するメンバーもいました。僕もいつか山荘で豪遊してみたいです。それから全員で白馬岳の山頂を目指しました。10分ほどの距離だったので、ここも全員揃っていきます。しかし、周囲はすでに雲に覆われていました。山頂から見えたのは360度の大展望(雲)です。



 山頂で記念写真を撮るなどして楽しんだ後、白馬大池に向かいました。稜線を歩いていると、右から風と一緒に雲が流れてきて、眼鏡のレンズが右側だけ濡れるのです。同様にまつ毛や髪の毛の先にも水滴がつきます。その状態で歩いていると、登山道の先に動くものがいました。それはライチョウでした。

 去年の燕岳に行った時から見たかった鳥です。それが3羽の群れで歩いていたのです。感激でした。一眼レフを持ってきた甲斐があります。一通り写真を撮ってから再出発です。その先の三国境のあたりでもライチョウのつがいを見つけました。大満足です。三国境での分岐を間違えないよう、方角に気をつけ、小蓮華山に向かいました。

 小蓮華山の山頂には剣が刺さっていました。剣で遊んでから先を目指します。景色は相変わらずの雲でした。景色が何も見えない登山道というのは不安になるものです。歩く先の地形が見えないので、本当に正しい場所を歩いているのかわからなくなります。地図とコンパスを頼りに、道が正しい方向に向かっているかを確かめながら歩いていきました。
 小蓮華山の先に雷鳥坂という場所があります。ライチョウがよく見られるとの事で楽しみにしていたのですが、見る事ができました。ここでも3羽の群れがいました。ハイマツの間を抜けると、少し平らな道に出ました。地図上ではテント場が近くにあるようでしたが、何も見えません。背の低いケルンが点々と先の方へ続いています。
 その時、左前方の方からゴロゴロゴロと音が聞こえてきました。雷の音のようです。さすがにこれはまずいと思いましたね。しかし、まだ音は遠く、テント場もすぐそこなのでそのまま歩くことにしました。



 それから5分くらいしてテント場に到着しました。その時は、達成感と安心感でいっぱいでした。テントを立てていると2班が到着しました。2班SLのKくんが倒れかけていましたが。しばらく待っていると3班がやってきました。どうも、近くを黒い雲が通ったりすぐ近くで雷鳴がして退避姿勢をとったりして時間がかかったようでした。合流できてよかったです…。
 全員無事揃い、テントを立て終わったあと、小雨の中で夕食の準備です。この日の夕食は炊き込みご飯でした。味が濃く、疲れた体に染み込んでいくようでした。しかし、夕食の片付けをしている最中で雨が強くなってきたため、片付けも早々にテントに退避しました。



 その後、テントに浸水した水を外に出してテントを移動させたり、トランプで遊んだりしているうちに夜はふけていきました。
 テントの中で大富豪に興じていると、例のKくんがチャックを開けて顔を覗かせてきました。雷雨になっているから小屋に避難すると言うのです。トランプに向いていた意識を外に向けてみると、確かに雨が激しく降る音が聞こえていました。最低限の荷物をまとめて、僕らは小屋に入りました。午後7時頃のことでした。
 小屋の中ではMIHAのメンバーと他の登山者が椅子に座ってじっとしていました。嵐が過ぎるのを待つというのはこういうものなのかと思いながら、僕も座っていました。時折、稲光とそれに続いて雷鳴が聞こえてきます。光の方向、それから雷鳴が聞こえるまでの時間を計算すると白馬岳の方で雷が落ちているようでした。もし頂上小屋でテントを張っていたら雷に打たれていたかもしれません。どうも命拾いをしたみたいでした…。
 雷が収まり、雨がやんだのは午後8時頃でした。小屋からテントに移り、この夜は生きた心地がしないまま寝袋にくるまるのでした。

 3日目の朝は、隣のテントのO先輩が、主将が寒さで震えているからお湯が欲しいとの声で起きました。時間は午前3時頃でした。全員起きてしまったので、そのまま朝食の準備です。主将は無事でした。
 朝食を済ませてテントを出ると、空は晴れていて、頭の上にはオリオン座が見えました。東の方は薄橙色に染まり始めていて、残った雲の影を浮かび上がらせていました。嵐が過ぎた後の朝は、今までにないほどすがすがしいものでした。



 準備を済ませ、栂池へ向けていざ出発です。ロープウェイの駅まで3時間程度の道のりなので、昨日に比べたら楽勝でした。岩の上を越え、ハイマツの間を突き進み、乗鞍岳(百名山でない)に到着です。ここでは短めに休憩をとって先に進むと、一面に雲海が広がっていました。雲海好きのK先輩は大喜びです。



 この先は大きな岩がゴロゴロしており、登山道の標識を探しながら岩の間を飛び越えて進んでいきました。坂の途中で、天狗原とその中を通る木道が、日光を跳ね返してきらきらと光っているのが見えました。先の道が見えるのは、やはりいいものです。
 下って行くと、登山道の中を水が流れていました。昨晩の雨でしょうか。水の流れが少しずつ広がっていくと、天狗原の木道に着きました。木道は信じられないくらい歩きやすかったです。今まで平らではない道を歩いてきたからですね。そんな木道も長くは続かず、水が流れて少しぬかるんだ道になりました。
 そのような道が延々と続き、1時間程歩いた頃に、建築物が見えてきました。ロープウェイの駅は近いようです。ようやく戻ってきたのかと思うと同時に、もう終わってしまうのかという寂しい気分になります。最後に建物の間を抜けて、栂池の登山口にたどり着いたのでした。そこは2時間以上前に見た雲海の中、つまり雲の中でした。
 後続の班を待ちながら売店を物色し、全員到着してしばらくしてから駅へ向かいました。麓まではロープウェイを乗り継いでいきます。雲を抜け、標高がぐんぐん下がるのをぼんやりと窓から眺めていました。



 ロープウェイを降りて後ろを振り返ると、雲の間から白馬三山が覗き、そびえるようにその山体を見せていました。あんなに高い所にいたのだなぁと感じながら、まるで冒険のような3日間を思い返すのでした。

 麓で入ったアルカリ温泉が最高だったことを、最後に付け加えておきます。